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モタード対談 第1回 スライド入門講座 2023.03.27
【講師】
全日本スーパーモトPROクラスライダー/イワイサーキット店長・川留健一さん
【聞き手】
マーキュリープロダクツ代表・薄井保彦
モタード歴20年超のマーキュリープロダクツ代表・薄井が、その広い人脈をフル活用(笑)し、ライディングについての疑問やバイクのセッティング、憧れのテクニックを身につける方法などを各分野のスペシャリストにお聞きする「モタード対談」をシリーズでお届けします!
記念すべき第1回は、川留健一(とめけん)さんをゲストにお迎えし、モタード技術の華である「スライド(ドリフト)」技術を習得するための練習法を伺いました。
☆入門編〜スライド練習方法〜
ーーカッコよくスライドを決めるためには、何から練習すればいいですか?
まずはリアタイヤを「ハーフロック」の状態にするところからですね。
スライドするためには、リアタイヤが空転しているんだけど、若干回っている=ちょっと路面に食っている、という状態を作り出すことが第一段階です。
ーー「ハーフロック」はどうすれば作れますか?
練習は、障害物がなく直線距離を長くとれる平坦で広い場所を見つけて行いましょう。
発進したら順にシフトアップしていき、3速で通常シフトアップするよりも少し高い回転数まで引っ張ります。そこで、アクセルオフと同時に1速までシフトダウンします。
クラッチは一気にリリースせずに、半クラッチで。同時にリアブレーキを踏むことで「ハーフロック」の状態が作れます。
失敗するとリアタイヤがガタガタと跳ね上がる「ホッピング」という現象が起きてしまいます。「ホッピング」が起きずにキキキキ〜と綺麗なスキール音が鳴っていれば「ハーフロック」成功です。
舗装路では「ホッピング」が起きやすいので、最初は砂地や河川敷などμの低いところで練習するのもおすすめです。
砂の上であれば、エンジンの回転をそれほど高くしなくても大丈夫です。2速から1速にシフトダウンしただけで、半クラッチを当てなくても自然に「ハーフロック」の状態になると思います。
ただし砂地はスキール音が鳴らないので、練習はしやすいのですが成功したかどうかが分かりづらいです。誰かに動画を撮ってもらうなどして確認しながら、感覚を掴んでください。
半クラッチの状態を作るのが難しい場合は、慣れるまでの間、クラッチの位置を調整して練習するのも一つの方法です。人差し指と中指の2本でクラッチレバーを操作し、薬指が挟まる位置が半クラッチ、握り切るとクラッチが切れる位置になるように調整して練習し、感覚が掴めたら通常の位置に戻します。
スリッパークラッチ装着車両は、シフトダウンすれば自然にハーフロック状態になります。
――フロントブレーキは使いますか?
フロントブレーキをかけた方がリアの荷重が抜けるので、やりやすいと思います。
ーーポイントはシフトダウンと半クラッチ、そしてブレーキングということですね。
ここで、ちょっといやらしいですが(笑)、川留選手が今シーズン使って下さっているマーキュリープロダクツのカンガルーレーシンググローブについてのインプレをお願いします!
バイクをしっかりとコントロールするために、グローブ選びはすごく大事です。
モトクロスのグローブは感覚が伝わりやすく操作がしやすいのですが、サーキットを走るには安全のために革製のレーシンググローブが必要です。
一般的なロードレース用のグローブはプロテクションが強い反面クラッチレバー操作時に握っている感覚が薄くなり、半クラッチが分かりづらくなってしまいますが、カンガルーレーシンググローブはモトクロスグローブのように柔らかく操作性が良いので、細かい感覚が伝わりやすいです。
最近では筑波選手権などのロードレースでも、マーキュリープロダクツのグローブを使っている選手を見かけるようになりました。モタードはもちろん、ロードレースの方にもおすすめです。
カンガルーレーシンググローブの詳細はこちら↓↓
ーーちょっと話が逸れましたが(笑)、これでリアタイヤの「ハーフロック」ができるようになりました。この状態でバイクを傾ければ、スライドが始まるということですか?
真っ直ぐの状態で「ハーフロック」の状態が作れたら、そのままバイクを曲がりたい方向に少し倒してみてください。
すると、曲がる方向と逆側にバイクのテールが出て、いわゆる「逆ハン」状態になります。
ーー座る位置は?
コースを走る中でスライドを取り入れる場合には普段のポジションと同じですが、練習の際は、いつもの位置より少しだけ前に座ってください。
ーーリアが振られた場合に、ステムに近い位置に身体があるほうが怖くないですよね。
足を出す位置はどのあたりですか?
足はなるべく前に出すほうが前に荷重がかかるのでやりやすいですが、けっこう疲れます(笑)。僕も初めの頃はピーンと前に伸ばしていましたが、今は膝を曲げるというか、持ち上げるイメージです。滑りすぎてしまった時やバランスを崩した時に、足を着いて対処できるポジションにしています。
ーー足を前に出していると、滑って路面に着いた時に足首を捻ってしまうなど、ダメージが大きいですね。膝を曲げて持ち上げるほうが、滑った時に足が引っかからず一緒に滑ってくれるので怪我が少ないかなと思っています。
滑ってもポーンと足を持ち上げればいいだけですからね。正解はないんですけど…
☆☆次のステップ…スライドの長さをコントロール
ーー以上でスライドは完成です。次に、スライドを止めるにはどうしたらいいですか?
意識して「止める」練習をするよりも「この速度でスライドしたら、どのあたりで失速するか」ということを感覚的に掴んでいくことが大事です。行き過ぎてしまったな、と思ったらフロントブレーキで調整します。
――止めるという意識ではなく、止まる位置をコントロールするということですね!
以上が、スライドの始まりから終わりまでの一通りのやり方です。
思いどおりにスライドができるようになったら、実際にコースを走る中でスライドを取り入れたいですね。コースで練習するとしたら、イワイサーキットであれば1コーナーでしょうか?
1コーナーが左ターンで、すぐ次のコーナーが右ターンなので少し難しいですが、スライドさせるとしたら1コーナーがいいと思います。
ーーところで、スライドすることのメリットは何でしょう?デメリットもありますか?
最大のメリットはカッコよさですが、理論的には、コーナリング中にフロントタイヤのグリップが活かせ、ブレーキングと向き替えが同時にできるというのが大きなメリットです。
さらに「滑らせて」コーナーに入っていくことで「滑ってしまった」時の対処が容易になります。
――「滑ってしまう」のではなく、自分から「滑らせる」ということですね。
デメリットは「滑らせる」ことを意識しすぎしまうとタイムダウンにつながることがある点です。
コーナーで滑らせすぎてしまうとタイムが遅くなる場合があるので、コースを走る上でのスライドというのは「滑らせる」というよりも「結果的に滑った」というほうが、デメリットがないと思います。
――そうすると、ガチガチにタイムを出すならばハングオン(グリップ走行)が正解ということですか?
コーナーを立ち上がる時にしっかりとアクセルを開けられるので、ハングオンのほうが速いと思います。僕はコーナーでハングオンはしませんが、最近はあまり足を出さないで乗るようにしています。
S1GP(スーパーモト世界選手権)などの海外の選手を見ると、ハングオンはしていないですが上半身を内側に入れているんですね。リーンウィズよりも車体が起きた状態になるので、アクセルを早く開け始められると思います。
――なるほど!コーナリングも色々なやり方がありますが、モタードをやっていたら、やはりカッコよくスライドを決めたいですよね〜!
僕もスライドがしたくてモタードを始めたので(笑)。
勝ちを狙うとスライドの量は減ってしまうんですけど、お客さんに見てもらいたいので、いっぱい流すようにはしています。やはりスライドは、モタードの醍醐味だと思っています!
☆☆☆いきなり!上級編
ーー川留選手や千葉智選手、新井誠選手のような、深〜いバンク角のスライドは、どうすればできますか?
「ハーフロック」を作る動作と車体を傾ける動作を、全て一気にやります。なるべくダイナミックに、大袈裟に身体を動かしていきます。
本当はステップに荷重をしっかりかけるのが望ましいですが、僕の場合は、寝かせる時はステップではなくシートに荷重しています。
加えて、思いっきりエンジンブレーキを使います。HSR九州のターン1などの回り込んだコーナーでは、通常は2速落としでスライドしているのを3速落として、強力にエンブレを効かせるとロングスライドが決まります。
ロングスライドをしていると時間に余裕ができ、バンク角の調整などができます。
ーーフォームはリーンアウトですか?
僕はリーンウィズです。ど真ん中でやっています。真ん中に乗っていないと、すっぽ抜けてしまいます。リーンインだと車体が傾かないし、リーンアウトだと傾きすぎてしまいます。
千葉選手は、リーンアウトで思いっきり寝かせていると思いますね。リーンアウトの方がタイヤのグリップが落ちるので、車体が傾くしバイクが進むと思います。
新井選手は、リーンインに近いですね。
人それぞれ、やり方が違います。僕はリーンウィズで、滑っている中でもなるべくタイヤを食わせるようにしています。
☆☆☆☆☆かなり上級編
ーー昨今、motoGPでも、特にmoto2クラスなどではコーナリング中にスライドさせている選手が多く見られ、「スーパースポーツなどのロードバイクで、ハングオンでもスライドができるの?」という声もあると思うのですが、いかがですか?
ハングオンでもスライドはできます。
僕は最近NS50に乗り始めてハングオンの練習をしているんですけど、「これでもできるじゃん!」と思いました。足を出しているか膝を擦っているかの違いなので、ハングオンでも慣れればスライドできます。
ただし、スーパースポーツだとハンドルの切れ角が少なく、ハンドルがロックして転倒する可能性があります。スライドできることはできますが、難しいです。
レース用の車両でハンドルストッパーが装着されている場合は、取り外してやってみてください。
街乗りのスーパースポーツであれば、そこまでハンドルが切れないことはないので少しやりやすいと思いますが、スライドをするにあたっては、ハンドルは切れるに越したことはないですね。
ーーハングオンスライドのコツはありますか?足出しスタイルのスライドとは違いますか?
それは、全然違いますね。
セパレートハンドルの車両は乗車姿勢がリーンインで、モタード車両と比べ乗車位置も後ろなので、より深いバンク角まで車体を倒さないと厳しいです。モタードとはライディングフォームも全く違うので…
ーーかなり上級編ということですね。
はい(笑)。
ーーモタード車両だと、フロントサスペンションのストロークが大きいので、フロントブレーキをしっかりかければ「勝手に滑る」ような状況になりやすいですね。
モタード車両であれば、慣れてくるとリアブレーキを使わなくてもスライドできると思います。スリッパークラッチが付いた車両であれば、ですけどね。
ーー初めて練習するならモタード車で、ということですね。
ロードレースの選手も、オフシーズンにモタード車両を使って広いところでスライドの練習をしています。スーパースポーツでスライドをしたい場合も、可能であればモタード車両での練習から始めるのが良いと思います。
ーー2ストロークの車両でもスライドできますか?
2ストロークだとエンジンブレーキがかからないので難しいですね。
スピードレンジが低いと難しいですが、250ccくらいの車両であれば、やろうと思えばできます。でも、2ストローク車両はスライドが長く続かないと思います。クラッチワークがすごく難しいし、リアブレーキもすごく大事です。「こんなに踏んでいいの?」というくらいリアブレーキをかけないと、スライドしないです。
リアブレーキについて
ーー最後に、ちょっと余談ですが、スライドする時以外でも「リアブレーキ使う/使わない」は論争になりますね…
リアブレーキは使うのが難しいですが、使った方が安定しますね。
特にモトクロスブーツを履いているとブレーキペダルを踏みづらいですけど、リアブレーキを使ったほうがバイクが曲がると思います。
僕なんかもちょっと雑に乗っているから、あまり使わないんですけど(笑)、使ったほうがいいと思います。
ーー川留選手、ありがとうございました!〆の一言をお願いします!
イワイサーキットでは、通常の走行枠の他に、お昼休みの時間に20分1,500円の走行枠があります。土曜日と日曜日には僕がいますので、お昼休みにスライドやウイリーのワンポイントレッスンを行えます。ぜひ気軽に声をかけてください!
毎月第三土曜日にはイワイサーキットにて「とめけん&イワイガールズによるサーキット未経験者と初心者の為の走行会」を実施中!〔座学〕〔基礎練習〕〔コース走行〕と順を追って学ぶことができます。自己流の練習を重ねるよりも、身体の使い方や走行ラインなどの基礎をしっかりと教わるのが上達の近道です!125cc以上のミッション車で参加可能。革ツナギ等の装備がなくてもOK! 詳細はこちら⇨https://637b9e75e1899.site123.me/?fbclid=IwAR3oaEQXc4J9J7vbqp7mYEZMS2rUTjjWeBHOdwqR0MkJEEWkk211rEXOiHQ
モタード対談第2回は「足回りセッティングHOW TO(仮題)」を予定しています。お楽しみに!!
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